ミートザワールド

先日、「Pの嵐」の収録を寿限無スタジオで行ったときの話です。
その日の火花の課題はブルグミューラーの「狩歌」と「せきれい」。
今現在、ギャラリーにはまだUPされておりませんが、わたくしの
やり直し回数が尋常じゃありません。。演奏にも疲弊の色が濃く、
どこか惰性すら感じる残念な出来なのではありますが、その収録
中に起きた出来事を今日はここへ語ろうと、そう思うわけであります。


「狩歌」の左手のリズムがですね、ずっと同じできてるかと思いきや
一箇所だけ変わる部分があるのですね。
わたくし。しばらくの間それに気付かずに別の箇所を失敗してはやり直す
を繰り返すたびにずっと同じリズムで刻んでいたのですが、、耳の良い
きのこさんは最初から気付いておられたのです。


失敗箇所をクリアし、よし!とばかりに若干高い音の方向へ鍵盤を叩こう
としてふと見ると、きのこさんがじっとわたくしの右手に鼻先を近づけて
いたのであります。
思わず爆笑して椅子から立ち上がったわたくしに、きのこさんは静かに
「かのちゃんさっきからここのリズムまちがえてるよね」とのたまりました。
「へ??」と、ハテナ顔のわたくしを横にきのこさんははたまた静かに
シャープペンシルを取り出し、「ブルグミューラーさんのファンからスパム
メールがきちゃうからね」と問題の小節部分へおもむろに缶詰の絵を描かれ
ました。缶詰の名称はその名も「スパム」。
「これはハムだからね」と丁寧な説明を加え、先生席に納まるきのこさん。
ここのリズムを間違えたらスパムメールが…!!!
焦燥にかられたわたくしはその後もリズムを間違え続けました。
そうして数回のリテイクが重なったとき、憔悴しきったわたくしをみかねた
きのこさんは再度シャープペンシルを取り出し、缶詰付近に大きく
「ミートザワールド」と書き添えました。
「この部分があぶないからね。シャープペンシルだからうまくいったら消せる
からね」。ひょうひょうとおっしゃるきのこ先生。
恐怖。ミートザワールド。そこはスパムな世界。スパムな落とし穴。
永遠に出られないかと思った魔のリズム地帯をほうほうのていで脱出し、
消しゴムによりわたくしは日常の世界を取り戻したのであります。


「狩歌〜ミートザワールド」どうぞ飛ばしてお聴きください。。