メイド喫茶えれじー

メイド喫茶メイドさんのお決まりの言葉といえば、
「いらっしゃいませご主人様(お嬢様)♪」


この言葉ばかりがあまりにも有名なため、それと対に
なる言葉を意識することがなかったわけなのですが。
ちょっと前に人生二度目のメイド喫茶に行ったときに
わたくしは痛烈にもう一つの言葉について考えさせられ
たのであります。


ご主人様とつくるらぶらぶカフェモカなるメニューの存在
に驚きつつ、注文が入るたびに厨房に響くレンジの甲高い
調理完了音を耳にしながら、忙しく働くメイドさんを遠慮
がちにちろちろ眺めていたわたくしは「ご主人様(お嬢様)」
を送り出すその声を改めて聞いたのです。


「いってらっしゃいませご主人様(お嬢様)♪」


いってらっしゃいませご主人様(お嬢様)。
いってらっしゃいませご主人様(お嬢様)。


ああ、なんと深い言葉なのでありましょう。
常連のご主人様(お嬢様)ももちろんたくさんおいででしょう。
でも、これが最初で最後のご主人様(お嬢様)もいらっしゃるのです。


ああ、なんということでしょう。
わたくしはそのときその瞬間、メイド喫茶に一期一会の縮図を見たの
であります。
いってらっしゃいませ♪と送り出すのはまた再びおかえりなさませ♪
とお迎えするときのための符号なのです。
いってらっしゃいませ♪と送られてももう二度とただいまと帰ること
はないかもしれない。もう二度とおかえりなさいませ♪と迎えること
はないかもしれない。
ああ、なんたる悲哀。そう、なんたる悲愛。


そして、いよいよわたくしもその席を立つときがやってきました。
「いってらっしゃいませお嬢様♪」
ドアを大きく開き、笑顔で外の世界への道を指し示すメイドさん
この後、メイドさんたちはまた別のご主人様やお嬢様のお給仕に戻り
忙しく立ち働くのでしょう。
わたくしはそっとコートの衿を立て(注:イメージ)、味気ない簡素
なビルの階段を一段一段降りていったのであります。
今宵の一期一会への静かなる思いをかみしめながら。ルルー。。


でもできればほしのあきちゃん似のメガネ娘メイドさんに送り出して
もらいたかったです。ちぇ。